理事長コラム~今月のひとこと~
外国人介護人材確保以前に取り組むべきこと
2024-11-28
第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要見込み量は、2年後の2026年には約240万人で、不足数は約25万人と推計されています。そして、2040年には約272万人が必要なのに対し、約57万人が不足すると言われています。さらに、この数字は介護保険の対象者で、障害福祉サービスは含まれていません。どうするか喫緊の課題であるにもかかわらず、介護人材は増えず(年間5千人程度の増加)、それどころか今回の報酬改定では基本報酬まで下げて小規模事業者を中心に過去最大の倒産事業所を出すという無茶な状況となっています。
こういう中で政府は、これまでのEPA(経済連携協定)に加えて在留資格「介護」、技能実習、特定技能1号などの新たな人材確保策を打ち出し、外国人人材を増やそうとしています。にもかかわらず、厳しい日本の介護ハードルに外国人からもそっぽを向かれつつある現状が、先日福山で開かれた「外国人介護人材確保・定着支援セミナー」における厚労省の説明を聞いていても分かりました。政府が介護人材不足の出口戦略の一つをどのように描いているのか再確認できたという意味で、セミナーに参加した意味がありました。
現場からのレポート報告は、障害分野から2本、高齢分野から1本の計3本でした。いずれもミャンマーやベトナム、インドネシアなどの現地に足を運び、事前学習、受け入れ準備、居住の確保からマニュアルの整備、OJT、N3・介護福祉士等の試験対策に至るまでていねいな取り組みがされていました。膨大な投資でもあります。これだけすれば、日本人職員に対するOJTにも、少なからぬ効果を生むというのはそれはそうだと納得させられるものでもありましたが、一方で、ここまで投資をする以前の、職場の人材確保策、定着策はどうしていたのか聞きたくなりました。
もっと大きな問題は、やって来る技能実習生や留学生が円感覚レベルで1千万円単位の借金を抱えてやって来るという事実です。そうして直面する日本の高い介護ハードル、将来性を含めた劣悪な労働環境に心折れている現実もあります。代替労働力、消耗品としか見ないこうした日本の受け入れ政策が、外国人に選ばれない国という評価にもなりつつあります。
本当に選ばれる国、あるいはそれ以前に日本人自身に選ばれる介護職場になっているのかどうかということが問われています。外国人介護人材確保の前に、わが足下の人材確保策、人材定着策が問われていると感じました。
(小河 努)
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