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理事長コラム~今月のひとこと~

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生きた証を刻む

2023-07-18
 5月には、くれんど発足20年の節目の総会を開催し、記念の『20年史』を発行することが出来た。手に取って見られたであろうか。

 編集委員会では、読みやすいようにという思いもあって、『10年史』に比べるとコンパクトに、半分は写真で編さんしたという。一方で法人として心配したのは、この数多い写真の掲載についてである。事前の了解はほぼ取っていなかった。

 今のところ、本人や家族からのクレームは届いておらず、正直ホッとしている。なぜ、気にするのか。個人情報、プライバシー保護の時代ということもあるが、本人や家族のなかには、障害をもつことで、社会の悪意にさらされて来た経験や、あるいはくれんど以外の選択肢を持たなかったことで、利用当初はくれんどの関係者であることに否定的な感情を抱いて来た当事者も少なからずいるためだ。

 しかし、あえて事前に一人ひとり了解を得るということもしなかった。なぜか。それは、あえて絶対に隠されるべきではない、という強い思いがあったからである。

 私は、2016年の7月に起きた津久井やまゆり園事件以来、掲載の写真を出すようになった。事件では19人の障害者が殺されたが、家族会の意向で全員の名前(もちろん写真も)が伏せられ、当たり前のように匿名報道になったことへの、家族会への怒りからである。

 もちろん、身内にいることを隠したい、入所施設へ入れたことを隠したいという家族の心情は、この70年近い間、姉、子ども、孫と、身近に障害者と暮らして来た者として、痛いほどわかる。

 だからと言って、存在をなかったことにするのか、あるいは障害者はそもそも社会にとって、加害者が未だに主張しているように、「不幸で、役に立たない不要な存在」なのか、この暗い問いかけに、くれんどは、「障害者もまたひとりの市民だ」という決意を持って答えようとしてきた20年ではなかったのかという思いが、これまた強くあったからである。

 わたしは30代の半ば、「隠されること、しばしば抹殺されることが障害者差別の本質ではないか」と思うにいたった。とするならば、ここ、くれんどでさらに何をしていくのかが問われている。アルバムに顔を出すのはその決意でもあると思いたい。もうすぐやまゆり園事件から7年目の7月26日がやって来る。

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