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理事長コラム~今月のひとこと~

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入所と地域のはざまに

2023-08-17
 先日、BSで『男はつらいよ』シリーズの13作目「寅次郎恋やつれ」をたまたま観た。後で調べてみると、1974年8月の公開だった。マドンナ役の吉永小百合も若かった。わたしもはたちそこそこで、当時ときに歩いた東京の下町の空気感を思い出して、ちょっと懐かしかった。

 もう一つ印象に残ったのは最後のシーンである。夫が病死し居づらくなった津和野の婚家から、とらやに一時的に身を寄せた歌子(吉永小百合)は、東京から遠く離れた島の障害者施設に、自分の残り半生を捧げるかのように飛び込んでいく。そして、「そこでの充実した障害者との生活」の様子を知らせるたよりが、とらやに送られてくる。

 60年代末から70年代にかけてというと、障害者のコロニー(入所施設)が全国につくられた時代に重なる。それは多くの場合、人里離れた山奥や島につくられた。障害者の行き先は、家で家族と暮らすのでなければ、そうしたところに運よく入る(収容される)というのが進路のすべてだった。

 同時代に生きた私の姉なども、新しく出来た施設への入所話があったが、間近になって本人が泣きわめいたために、話が立ち消えになったことを覚えている。が、しかし入所施設は、そんな選ばされる現実を知らない当時の一般社会にとっては、「おとこはつらいよ」の映画が描くように、「理想郷」に見えたに違いない。

 そんなところに飛び込んだ歌子のような人は美談として語られたが、その先の話も私たちはすでに経験している。70年代に入ると、府中療育センター事件のような入所施設を当事者自らが告発する闘争が起き、また、79年の養護学校義務化に反対する地域就学闘争も全国に起き、80年代に入ると、共育・共生のたたかいから自立生活運動のうねり、地域が大きなキーワードとなった。

 にもかかわらず、どうだろう。現在もなお、私たちの社会は、入所施設を否定することは出来ず、やまゆり園事件やカリタスの家事件、滝山病院事件を許し、国連の人権委員会を始めとする国際社会からは、そうしたわたしたちの社会が批判され続けている。

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