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理事長コラム~今月のひとこと~

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母よ殺すな

2023-09-27
 最近、機会があって、あらためて横塚晃一の『母よ!殺すな』(生活書院)と横田弘の『障害者殺しの思想』(現代書館)を読んだ。

 横塚晃一も、横田弘も脳性マヒ当事者で、これらの本は、70年代にそれぞれが発言したものをまとめたものである。きっかけになったのは、1970年5月に横浜で起きた母親による2歳の下の子に対する絞殺事件だった。この事件は、青い芝の会(日本脳性マヒ者協会・全国青い芝の会)が、それまでの親睦団体から強烈な当事者団体に変貌するきっかけになった事件だった。

 当時、家族による障害児殺しは、無罪になることが多く、この事件でも、起訴されるまでに1年半もの時間がかけられ、判決には、執行猶予がつけられた。その理由は、重症児を育てるとりわけ母親への「過酷な負担に対する情状酌量」だった。

 そうして、町内会を始め、全国の市民からも、減刑嘆願運動が起きるのが通例だった。たとえば、父母の会の県代表から横浜市長宛てに出された抗議文には、つぎのような文言がある。

 「生存権を社会から否定されている障害児を殺すのは、やむを得ざるなり行きである、と言えます。日夜泣き叫ぶことしかできない子と親を放置してきた福祉行政の絶対的貧困に私たちは強く抗議するとともに、重症児対策のすみやかな確立を求めるものであります」

 「福祉行政の絶対的貧困」とは入所施設のないことであり、「重症児対策のすみやかな確立」とはすなわち、入所施設のすみやかな整備にあった。それに対して、横塚らは、つぎのような問いかけを社会に投げかける。

 「福祉対策が入所施設の整備にあるとするなら、われわれのような生まれつきの障害者は、一生社会復帰出来ないということになるではないか。嘆願署名で免罪しようとしたものは、母親でなく、地域や社会の目ではなかったのか」

 そうした中から出来た青い芝の会の4つの行動綱領は、当時強烈なインパクトをもたらした。一方で、こうした突きつけは、私のようにきょうだいに障害者がいた者にとっては、自分の立場をすっきり整理することが出来た指摘でもあった。

 ① われらは自らがCP(脳性マヒ)者である ことを自覚する。 
 ② われらは強烈な自己主張を行なう。
 ③ われらは愛と正義を否定する。
 ④ われらは問題解決の道を選ばない。

 日本における「当事者主権」と「地域福祉」は、こうして青い芝の会がその先鞭をつけた。

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