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理事長コラム~今月のひとこと~

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障害から見えて来るもう一つの世界と代弁

2024-10-15
 呉社協主催の介護職員初任者研修では、最近は「介護における尊厳の保持・自立支援」と「障害の理解」を担当させてもらっています。9月も今年度3回目となる同講座で話をさせてもらいました。その中から、報告したいと思います。

 そもそも「介護における尊厳」とか、「自立支援」などとわざわざ言わなければならないのは、取りも直さずそれらが保障されていない現実があるためです。その現実については、依然として右肩上がりの虐待案件などから、そしてその背景、理由については、2016年の津久井やまゆり園事件から考えていきました。2つ背景を挙げるとすれば、①障害者・高齢者など社会的マイノリティに対する潜在的な差別感情、優生思想と、②職場の多忙化などの環境要因があります。これらのことを自覚しておくだけでも、自らの潜在的な暴力性を回避するいくらかの力になると思います。

 しかし、最終的に現場のケアワーカーが虐待・暴力の加害者になるとすれば、どうすれば回避できるのか。ひとつは、前述の自己覚知(当事者の痛み・差別の現実を知る、感情労働者であることの自覚、労働環境を知ること)。ふたつめは、法制度・倫理綱領を知ること(制度の現実と限界を知る、あるべき倫理姿勢を確認すること)。3つめは、フレームを変えて見ること(今、見えているものを相対化する視点。希望や展望をつくること)です。これらが抑止力になっていきます。

 19人の障害者を殺し、25人の障害者に重軽傷を負わせた津久井やまゆり園事件の加害者は、「障害者は不幸しか生まない。(だから)生きてても意味がない」と言い放ち、実際自らの手で実行しました。このカレに典型される優生思想に正面から答えなければならない―というのが、2コマめの「障害の理解」における私のミッションでした。障害種別の障害の解説をしたり、ただやってはいけない、人として生きる権利があるなどと反論するだけでは、事件の加害者には説得力を持ち得ません。

 それは、実際に障害を受けて、家族に持って、あるいはかかわって見えてきたものを伝えるということだと思います。幸不幸以前に、少なくとも障害を受けて見えてきたものはある。それを可視化、言語化、アドボケートするのが、私たちケアワーカーの仕事です。

 当事者・家族とともに私たちがしなければ、いったいだれが代弁するのか。なぜ、人類は赤ん坊を含めた社会的弱者、社会的マイノリティを群れに包含して来たのか。そういった幸不幸以前の人類の存在のありようを、障害者を通して語るやりがいを感じてほしい。ぜひケアワーカーの仲間になってくださいというようないくぶん感情的な話をして、2コマの話を終えました。

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