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理事長コラム~今月のひとこと~

「もう一つの出会い」「もう一つの世界」という希望

2024-07-16

 家族基盤や生活基盤をプラットホームに例えるならば、プラットホームを失ったり初めから持たなかった人たちは、さしづめ孤独・孤立の世界に生きることを余儀なくされて来た人たちである。今年の4月1日に施行された「孤独・孤立対策推進法」では、この孤独・孤立の状態は世代を問わず発生する可能性があるとして、「社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ること」を求めている。
 
 実際、社会的孤立の要因の一つとなる単身世帯は、2015年の統計で1845万世帯(人口比14.5%)、貧困率は15.4%(2018年)と上昇カーブを描き続け、また、困窮要因の一つとなる非正規雇用者の比率は、1984年には15.3%だったものが2018年には37.9%(約2100万人)にまで急増するという現実が法制定の背景にある。
 
 貧困や孤立はこうして、私たちのごく身近に自分自身の足元に見えるようになった。今はプラットホームのある人たちもいつ崩れるか分からない状況のなかに生きていると言える。そういう中でくれんどでも、ホームレス支援や自立準備ホームを通して、プラットホーム(社会的基盤)を失った人たちと出会う。そして、つなぎ直しをしようとしている。
 
 経済的困窮や社会的孤立を政治の責任にするのは簡単だが、それだからといって目の前の人たちとかかわらないわけにはいかない。プラットホームから切れた人たちから、切れかかった人たちやプラットホームの上にまだ乗っている人たちの課題も見えて来るからだ。障害者自身あるいは家族においても、未だ市民としての権利や自由が保障されているとは言い難い。くれんどではそこから「障害者を市民に」というコンセプトワードをスローガンにした。入所以外の「もう一つの選択肢」「もう一つの世界」をつくるために、この20年取り組んで来たとも言える。
 
 それは、今日の「孤立の時代」を先取りする取り組みでもあったと思っている。家族以外の人たちとつながり直すという取り組みである。「もう一つの出会い」「もう一つの世界」は、その際の私たちの希望のことばである。

(小河 努)

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