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理事長コラム~今月のひとこと~

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追いまくられる私たちと何もしないプー

2019-11-09
 最近ディズニー映画『プーと大人になった僕』を観て、対照的な王兵(ワン・ビン)監督のドキュメンタリー映画『苦い銭』を思い出しました。『苦い銭』の舞台は、おびただしい数の個人経営の縫製工場がある、上海に近い出稼ぎ労働者の街・浙江省湖州市です。住民の8割は、農村からの出稼ぎ労働者と言われているところです。
 
 カメラは、一人の被写体に近づくように見せながら、ほかの被写体にショットや焦点をずらし、ずらしてはまた元の被写体に戻し、さらにほかの被写体にずらしていくという手法を取り、さながら、揺れながら流れていく中国の出稼ぎ労働者を象徴しているように見えました。「1枚9元(約17円)の加工賃でやってられるか」と、破滅的なマルチ商法にはまっていく労働者も描かれます。
 
 9月の終わりごろだったかの報道で、中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳でも、借金づけでネット賭博にのめり込み、貧困から抜け出させない悪循環に陥っている路上生活者の姿が特集されていました。中国政府の統計によっても、昨年の出稼ぎ労働者は2億8652万人、総人口の2割に及び、この国においても経済の調節弁として労働者が使われている現実があります。監督のワン・ビンは言います。「ここで目にする限り、人生は不毛です」。
 
 一方、100エーカーの森で暮らし続けている、ちょっとおバカさんの「くまのプーさん」は、大人になって再会したクリストファー・ロビンにこう言います。「みんなはなにもしないのは不思議だっていうけど、ぼくは毎日やっているよ。『なんにもしない』を」。何もしないことが、最高の何かにつながるのだというメッセージを、仕事に追いまくられているロビンに伝えます。この世界がこのままで立ち行くとは、実はだれも考えていないということをそのひと言で語ります。この世界に投げ出された私たちが、それでもなぜ生きていくのか、生産性とは何か、効率性とは何か、シンプルに考えさせてくれる映画です。絵本も、あらためて手にとって読んでみられたらいかが。

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