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理事長の連載コラム~今月のひとこと~

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当事者からのメッセージ

2021-02-17
「手話を第一言語として暮らしているろう者たちは、(人工内耳手術の増加によって)手話言語をもたない聴こえない子どもが増えるのではないかと不安を感じています」
(12/2でふらく会報告から)
 「手話を持たない聴こえない子どもが増える」ことに「不安を感じる」とは、当事者以外にはなかなか言えないことばです。そこで私たちは、ろう者が、多数派とは異なる言語と誇りを持って生活していることに、あらためて気づかされ、障害者に対するネガティブな価値観を揺さぶられることになります。

 でふらく会というのは、聴覚障害をもつくれんどの利用者と職員の当事者会です。定期的に集まって、さまざまなテーマで話し合ったり、活動をしています。くれんども所属しているちらくれん(芸南地域を楽しむ連絡協議会)の当事者メンバーでもあります。会からは、事業所に対して、手話や字幕の保障などの指摘がなされています。そういった指摘を受けて、全体での手話研修や事業所ごとのミニ手話研修を立ち上げ、所外の手話サークル等の活動にもつなげて来ています。

 でふらく会にとどまらず、くれんど・ちらくれんでは、楽人の会(身体障害者の会)やピープルファースト(知的障害者の会)、しゃべろう会、当事者連絡会などの当事者の活動が展開されています。そのなかから、ILP講座(自立生活プログラム)や重度訪問介護従事者養成研修に当事者が参画して、たとえばホスピタリズム(施設主義)について、実体験に裏打ちされたメッセージを発信しています。

 社会の現実は一方で、昨年も、3月16日には、5年前の障害者殺傷事件の植松聖被告に地裁で死刑判決が出、7月23日には、京都のALS(筋萎縮性側索硬化症)嘱託殺人容疑で、2人の医師が逮捕されるなど障害者に対するネガティブメッセージが強まっているように見えます。相模原事件の植松聖からは、「重度障害者は不幸を生む」「だから、いないほうがいい」というメッセージが伝わって来ます。ALS当事者の林優里さんからは、「安楽死したい」「早く終わりにしたい」というメッセージが発信されました。

 しかし、2つの事件は違う角度から見ることができます。少し古いですが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の人工呼吸器装着率についての「ALS患者にかかる在宅療養の整備状況に関する調査」(2003年)によると、実際には男性で67.9%(529人)、女性で32.0%(249人)の人が、人工呼吸器を希望しているという事実です。男女の大きな差は別に問題にされるべきですが、注目すべきは、これほどにも、人は直面すると選択において揺れるという事実です。林さんも、生きたいという希望に揺れていたことは、ブログのなかに見えます。それでも障害者は抹殺されるべき対象でしょうか。

 植松聖も、自分が世の中の役に立っていないという不安にかられていたという意味では、事件はその裏返しとして、重度障害者に向かったという見方ができます。「役に立っていない」という強迫観念が、彼自身を追い込んだと読み取ることも出来ます。

 このことに対する明確な答えは、くれんどの当事者活動のなかに出ています。社会からの障害者への抑圧的なネガティブメッセージにもかかわらず、なぜ生きていてはいけないのかと、それでも介助体制について抗議し、対案を出し、手話言語のようにもう一つの世界があること、世界は多様であることを訴え続けています。振り返ってみれば、くれんどの立ち上げと17年の歩みも、ネガティブメッセージに対するたたかいだったように思います。

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