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理事長コラム~今月のひとこと~

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イスも、キズナも

2010-03-03
3/1,2 都道府県「地域生活定着支援センター」の円滑な運営にむけて:現任者研修報告
 
 先日報告したように、法務省と厚労省のコラボ事業となった再犯・累犯高齢者・障害者の地域生活への移行、定着をはかる「地域定着センター」は、今年度2月現在で11県に設置されています。来年度は広島をはじめ多くの都道府県で予算化され、いっきに増えていく情勢となっていますが、そうした状況を前に、厚労省社会福祉推進事業の委託を受けた南高愛隣会(長崎地域定着支援センター)主催の現任者研修会(中央研修会)が、千葉の幕張で持たれました。2日間、多くの講義やディスカッションがありその一部については、改めて所内研修や県へのプレゼンに使いたいとは思いますが、ここでは、いくつかの感想を述べて報告に代えたいと思います。
 
 「イス取りゲーム」を思い浮かべてください。イスに座れなかった人に「努力が足りない。どんくさい」とあなたは言うでしょうか。今の社会はそう言っているように聞こえます。刑余者、多重債務者、ホームレス、……「競争原理」「効率」を求める社会の中で、「自己責任論」に基づく排除が横行しています。しかし、たとえば09年の有効求人倍率はたとえば0.45倍です。イスは絶対に足りないのです。必ずイスに座れず、またハウス(居住)やホーム(拠り所・きずな)を失う社会システムが厳然として存在しています。
 
 仮に「好きでホームレスをやっている」と論評するなら、まず、生きるために十分なセーフティネットや選択肢を用意してから言うべきです。
 
 くれんど、すなわちみなさんが今行いつつあることが、どこに位置しているのか考えてほしいのです。わたしは、3つの展望(段階)を基準にしています。
①「きずな」をふくらませる段階、市民として生きるメニューを拡げる段階
②「きずな」を失わない段階、ハウス(住居)とホーム(拠りどころ)を失わない段階
③切れた「きずな」を回復する段階
 
 なぜ、「刑務所に帰りたい」がためにさい銭泥棒をくり返したり、放火をくり返したりする障害者が多くいるのでしょうか。
 
 「生きるところがあればそこが施設であろうと、刑務所であろうとそれでいいじゃないか」という社会意識が、私たちの中にまだありはしないでしょうか。
 
 特別な場所に入れられて処遇されるのがこれまでの日本の福祉であり、未だにわたし自身が相談のなかで現実ゴールにしているのが「入所施設」です。やりきれない気持ちをいつも堪えています。そうして何十年も入れられたまま死んでいき、行かなければ家族や社会からときには殺され、場合によっては「自らのぞんで」刑務所に入り、模範囚として満期出所し、そしてまた入っていくのです。
 
 笑えない「冗談」が刑務所に入っている「障害者」のなかでささやかれているそうです。「福祉(入所施設)には絶対に行くな。そこは一生出られず、そこではいつもイジメられる(虐待される)」。刑務所の方がマシだというのです。…考えてみればそうした現実があることも事実です。
 
 くれんどは、そうしたところから見れば、相対的には(あくまで相対的にはですが)「家族にめぐまれ、学校にめぐまれ、地域にめぐまれ、社会にめぐまれた障害者」を支えようとしているところなのかも知れません。
 
 くれんどは入所の施設を持ちません。「洋介モデル」は持っています。しかし、それは今のところ点でしかありません。どうしたら、バリエーションのある夜を含めた地域モデルを描くことができるのか、支えられるのかというそれぞれのポジションでの具体的なシナリオと実践がなければ、そこから「転落した」人たちの支援はできないのかも知れません。

地域ネットくれんど
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TEL.0823-84-3731
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