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理事長コラム~今月のひとこと~

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発達の障害(保障)か関係の障害(創造)か

2010-06-02
 アーヴィング・ゴフマンは、大都市で生活する人々に見られるような行動様式を、「市民的無関心」(儀礼的無関心)と呼びました(『スティグマの社会学』)。私たちは、自ら市民的無関心を装うことによって、相手を認識しているということ、相手を恐れていないこと、相手に敵意がないことなどを示しています。
 
 ゴフマンの考えによれば、個人は、他者との相互作用に暗黙のルールを認識し、自らの役割を演じることを通じて自己を作り上げていくものです。それは、電車の中で、学校の中で、会社の中で、あらゆる社会的状況の中で実践されています。そのような実践の中で、さらに新たな自己(役割)を使い分けていくわけです。以上のことから、逆に不器用な人々はたとえば「発達障害者」として括られていきます。
 
 この見方は、いわゆる障害者を、発達の障害された状態として烙印(スティグマ)を押す(したがって発達を保障されるべき治療・療育対象として見る)ことから、私たちと境目のない「関係の障害」としてとらえようとする(したがって関係を作りなおす、新たに関係を構築・創造しようとする)ことへの転換を求めることにつながります。
 
 『アウトサイダーズ』によって、ゴフマンと同様、差別や偏見は社会関係によって生み出されるとしたのは、ハワード・S・ベッカーでした。ベッカーは、犯罪、非行、麻薬中毒といった社会規範に反する行為、いわゆる逸脱行為によって逸脱者が生まれるのではなく、周囲がその人に「逸脱だ」とラベルを貼ることで、逸脱者となっていくのだと論じました。これを「ラべリング理論」といいます。
 
 社会が逸脱というラベルによって逸脱者をつくる発想は、「何が逸脱であるか」ということ自体が、社会や時代によって異なるという事実に目を向けさせます。世界には飲酒が年齢を問わず逸脱行為とされる国があります。しかし、日本では飲酒が逸脱行為とされるのは未成年に限ってのことで、それも1910年代以降のことです。
 
 ゴフマンもベッカーも、差別や偏見は社会関係によって生み出されるものであり、差別や偏見を受けた人自身のアイデンティティにも影響を与えるものだと論じることで、社会的弱者を力づけ、差別や偏見を抱える社会に見直しを迫ったのです。

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