理事長コラム~今月のひとこと~
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福祉のある“わがまちづくり”
2010-07-02
先日、あるセミナーに参加しました。セミナーは、フロリダ在住で「米国タイムバンク・エリア代表」のへロン久保田雅子さんの講演や、国内で地域通貨を通して「福祉のあるまちづくり」に取り組んでいる3つの団体からの活動報告が主な内容でした。
まずタイムバンク(時間預託)というコア・エコノミーですが、これは、通常考えられる経済システムつまり金融経済・市場経済に対しての二番目の経済システム、すなわち家族や隣人、コミュニティや市民社会から成り立っている、基本的にはお金に換えられない経済システムを指します。実現するものは、子どもたちやお年寄りの世話、愛情や思いやり、お互いの助け合いや分かち合いの形成、活気ある近隣やコミュニティや市民社会です。したがってベクトルは、ボランティアのように一方向ではなく、双方向に向いています。
この実現を仲立ちするのが、タイムバンク(タイムダラー)であり、日本でいう地域通貨・時間通貨となります。地域通貨をひと言で説明すると、お互いの「してほしいこと」「できること」を、一定の基準を設けて交換し、地域やグループ独自で工夫した「通貨」を用いて循環させるものです。お互いの助け合い活動を通して、市場では決められない人々の能力をひき出し、地域で活かすことができる仕組みをつくるアイテムです。地域通貨のなかでも、とくに「時間」を単位としてサービスの交換を行うものを、「時間通貨」と呼んでいます。アメリカでは、タイムダラーを貯めて大学へ通う奨学金にしたり、留学している人たちもいるようです。
ひるがえってくれんどの本来事業のなかでは、血縁や地縁、社縁といったものから切り離されるリスクの多い人たち、つまり社会的孤立や無縁社会というものとむき合おうとしています。このタイムバンクというツールで、「拡大家族」の実現というパラダイムシフトの転換がはかることができるのではないかという情報は、私たちや当事者・家族に希望を与えてくれると思います。アメリカ先住民にはつぎのようなことわざが言い伝えられているそうです。
わたしたちはこの土地を先祖から受け継いだのではない。子孫から借りているのだ。
逆説的に言えば、私たちは、この惑星に生きるかけがえのない一瞬を共にしているだけなのです。