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理事長コラム~今月のひとこと~

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死刑論議におもう

2010-10-01
 死刑廃止論者は「生きて償うべきだ」といい、死刑廃止論者は「死んで償うべきだ」という。どっちも間違いではないかと思う。いくら反省しても、いくら苦しんでも、命を絶っても、死んだ人が戻る訳はない。失った命は絶対に取り戻せないという単純な事実の前に、「償う」ということばはあまりに空虚である。
 
 被害者家族は言う。「あなたの家族が殺されても、死刑に反対できるのか」と。
 
 それは、出来ない、かも知れない。しかし私は今のいま、被害者の家族の痛みを共有出来ず、ましてや理不尽にも殺された当事者の痛みも共有出来ない位置にいる。そして、被害者側にも立てず、加害者側にも立てない自分がいることを感じている。さらに、どちらも想像できる立場にいる自分がいることも感じている。
 
 死刑論議に関して、もう2点述べておきたい。1つは、ある世論調査では86%の日本人が死刑制度に賛成だということだが、国際的には死刑制度を維持している国は少数だという事実である。これは、必ずしも死刑制度の維持が犯罪の抑止につながらないという事実から来ている。
 
 もう一つは、人間にはえん罪を防げないという事実である。折しも今年は、幸徳秋水ら24人がえん罪によって、えん罪というより国家による犯罪によって処刑された大逆事件からちょうど100年になる。政治家与謝野馨の祖父であり、歌人与謝野晶子の夫である文人与謝野寛(鉄幹)は、大逆事件で大石誠之助が処刑されたあと、つぎのような皮肉な追悼文を書いている。
 
 大石誠之助は死にました。いい気味な。機械に挟まれて死にました。人の名前に誠之助は沢山ある。然し、わたしの友達の誠之助は唯ひとり。わたしはもうその誠之助に逢われない。なんの構うもんか。機械に挟まれて死ぬような馬鹿な、大馬鹿な、わたしの一人の誠之助。それでも誠之助は死にました。おぉ死にました。日本人でなかった誠之助。立派な気ちがいの誠之助。有ることか、無いことか、神様を最初に無視した誠之助。大馬鹿な誠之助。大馬鹿な誠之助。ほんにまあ、皆さん、いい気味な。その誠之助の一味が死んだので、善良な日本人は之から気楽に寝られます。おめでとう。

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