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理事長コラム~今月のひとこと~

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異論「自閉症スペクトラム」

2010-12-02
 自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)の医学的な見立ては、歴史的には60年代の「統合失調論」、「親の子育て不全論」から「性格のかたより論」、70年代以降の「言語・認知障害説」、「脳障害説」に移行して来た歴史を持っています。
 
 それに対してたとえば小澤勲は、70年代の終わりから次のように発言しています。
 
「自閉症範疇化の中核症状は自閉(社会的孤立)である」「医師になって、まず自閉症(広汎性発達障害)児とのつきあいから始めた。大半が言葉のない知的障害の深い子どもたちだった。確かに言葉はなかったが、その分、深くつきあえると私は考えていた。彼らの特徴は自閉と言うが、彼らほど人とのつながりを希求している子どもはいないと感じていたからである」「自閉は人と人とのかかわりのなかで生起する事態とみるべきであり、症状としてとらえるべきではない」「私たちが問題にしてきたのは、「自閉症問題」を扱う人たちが、そこに「個人の病理」だけを見ようとしてきた姿勢についてである。「自閉症問題」(あるいは「障害者」と総称される問題)が私たちに長年にわたって投げかけてきたものは、私たちが「人類」と呼ばれる問題、つまり「類としての存在」を見る目に関わる「課題」でもあったのではないかという疑問についてである」……。(『自閉とは何か』洋泉社)
 
 そして小澤勲はさらに、時代のエポックとなったその著書のなかで、児童精神医学会で、ある親から告発を受けた内容を紹介しています。40年前のこの指摘は少しも古びていません。長くなりますが紹介します。発達障害に限らず、私たちが障害者にかかわるときの出発点にしなければならない問題提起を含んでいると思います。いわゆる「個人(病理)モデル」は克服されているのか、という点です。
 
 ……かつて児童精神医学会で一人の自閉症児の親が「自閉症について有名な先生方の本を読みました。<ある子は数学の才能があり、ある子は画の才能がある。またある子は……である。音楽に関心を示す子が多く、音楽セラピーは最大の効果がある……>。さて、わが子はと見なおしたところ、とても知的なものはなし、ただ紙を手にひらひらさせて一日終わるだけ……。わたくしたちのグループにいたある母親についていえば、そのかたは自閉症の権威である、さる高名な先生に初めて診ていただいて、さんざん夢を吹きこまれました。そして、8歳にもなってまだおもらしをし、手づかみで食事する自分の子どもの上に夢を見つづけています。
 
 いわゆる能力をひきだすということがたんなる希望にすぎないことは百も承知の上でなお、そして能力などと子どもの一部分だけをみることで、子どもの生活全体を見失わされてきたことのあやまりをじゅうぶん知りつくした上でなお、まだあの先生がいわれたようなものがないかと必死の努力を続けています。
 
 ……わたくしたちが先生がたに受けとめてほしかったのは<このような子を持つがゆえのわたくしの苦しみ>ではありません。<このような子を持つがゆえに周囲からうける差別や邪魔者扱い、そのような社会の中で生きていく上でのわたくしの苦しみ>なのです。先生がたは残念ながら、<周囲>に対して、<社会>に対してたたかおうとされず、問題を子どものゆえにというところにしぼってしまい、子どもの処遇だけを考えてしまわれています。それこそ、わたくしたちが<苦しめられてきた>周囲の者のこのような子どもに対する見かたそのものなのです。先生がたはこうしてわたくしたちへの敵対者として社会一般のわたくしたちの子どもに対する攻撃の代弁者として、わたくしたちの前に登場されているのだということをはっきり自覚しておいででしょうか」と、われわれに問いかけた。……

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