理事長コラム~今月のひとこと~
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めでたさも 中くらいなり おらが春
2010-12-18
ひねくれた小林一茶が好きで、年末になると、ときに『おらが春』を読んでいる。
とくに、誰も訪れる者のいないおそらく山寺の大みそか、和尚みずからしたためた手紙を小僧に持たせ、元旦のまだ小暗い朝にわざわざ門の外から「ちょう、ちょう」と新年の訪いに叩かせる、何とも孤独で切ないシーンがいい。その西方浄土からの手紙にいわく、「そちらの世界は、衆苦に満ちておろう。早く吾国(浄土)にまいれ。聖衆ともども待っておるぞよ」と。和尚は、その手紙を読んで「おう、おう」と思いっきり泣く。それを一茶は、みずからこしらえた悲しみにみずから嘆くのが仏門の骨頂かと皮肉をこめていう。
それに引きかえ、わが俗塵にまみれて世を渡る境界には、新年の口上もそらぞらしく、煤(すす)ははかず、門松も立てず、あなた任せに年を迎えて…と、冒頭の句につながる。
『おらが春』、一茶57歳の句集である。3歳にして実母と死に別れ継母・義弟との確執を抱え、1年前にやっともうけた一女さとを痘瘡で死なせている。
この句集には、次のような有名な句も収められている。
●我と来て遊べや親のない雀
●露の世は露の世ながらさりながら
そして、締め括りは。次の句である。
ともかくもあなた任せの年の暮れ