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理事長コラム~今月のひとこと~

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アリが渋滞を起こさないという現象から何を汲み取るか

2011-02-24
 渋滞学という学問があるらしい。昨年のことになるが、12月に京都で開催された「ATACカンファレンス2010」に職場の仲間と参加したときのことである。ちなみにATACとは、そのまま訳せば「支援技術と拡大コミュニケーション」と訳される。つまり、障害者や高齢者とコミュニケーションを取るために、単に1つのテクノロジーや方法論にとどまらず、使えるあらゆる手段を開発し試みてみようではないかという、当事者自身の参画を前提とした野心的な学際的な研究と解釈した。
 
 そのオープニング講演が、「数理科学から交通渋滞などの社会現象を解析する」と題した西成活裕東大先端研教授の講演だった。それは、アリの観察から始まった研究発表だった。「どんなにたくさんの群れになろうが、アリは決して渋滞を起こさない」という事実とその観察から、どのようにすればそれを車社会の渋滞の解消に応用できるかという話で、とても面白い内容だった。感想は、事実の切り取り方である。
 
 「アリは決して渋滞を起こさない。パニックを起こさない」という現象一つをとっても、たぶん見るひとによって評価は変わって来る。ある人は、それを「譲り合い、利他性」の結果として評価する。それに対して、ほかの人はそこにパニック(渋滞)を起こさない「効率社会」の極みを見るかも知れない。利他性は共存、スローライフを連想させる。効率は、今の日本社会では競争、排他性を連想させる。一つの現象から、まるで反対の相対立する結論が導き出される。
 
 目の前に展開されていることは、たぶん一つの現象だ。それをどう切り取って使うか、解釈は分かれる。その違いをさらにどう評価するのか、…とても消化しきれないその後のコマ切れの分科会への渡り歩きで、ごちゃごちゃと考えさせられた。いずれにしても、ヒトの歴史はせいぜい400万年、それに対してアリの歴史はざっと1億年、しょせん生物としての格が違うことだけは確かなようだ。

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