理事長コラム~今月のひとこと~
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ある病者のモノローグ
2011-07-19
薬が抜けていくのが分かる
意識がしだいに目覚めていく
目覚めることは確かに苦しいことに違いない
道路のあらゆる直線が甦る。
だれやらのこんな詩の一節が突然思い浮かぶ
あらゆるものが等価に目に飛び込んで来る
ありとあらゆる人と生物との生き死にが気にかかり
世にはかくも考えなくてはいけない事象が多くあり
なんと多くのやらなければいけないことがあり
悩まなくてはいけないことが数多くあり
心配と恐怖にしだいに心臓が締めつけられ胸が押しつぶされる
目覚めることの息苦しさ
皮膚の裏側がすべて剥き出しになったような痛さに襲われる
さて 戻ることにしよう
すべてを鈍磨させてくれる薬
私は透明な薄暮の中に墜ちる。戦慄は去った。
…私は私自身を救助しよう。
※太字は富永太郎の詩『秋の悲嘆』から。