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理事長コラム~今月のひとこと~

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I was born

2012-08-04
 日本語の教科書にも載っている詩人吉野弘の有名な散文詩のタイトルです。
 
 …英語を学習したての少年がある妊婦とすれ違った際、日本語でも英語でも「生まれる」は受身形であることに気づき、ともに歩いていた父にその発見を伝える。父は少年の言葉を受け、かつて友人にすすめられて観察したカゲロウの話をする。カゲロウはものを食べないため口がなく、成虫になってからの寿命も短い。父が顕微鏡で観察したカゲロウの腹には無数の卵が詰まっていた。そのカゲロウの観察から数日後に母が亡くなったことを父は少年に教える。少年は、自分の肉体が母の胎内を満たしていたことに思いを馳せる。…
 
 この詩の中で詩人は「I was born」について父親のことばとして、「正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね」と語らせている。つまり「好きで生まれて来たのではない。親が勝手に産んだのだ」という理屈は文脈上正しいということになります。
 
 引用が飛躍しますが、(したがって)生まれることは赤ちゃんにとっては迷惑な話なのだから、幼児が泣くなんてことは、わがままなんてことはあたり前の話で、幼児には絶対の依存を与えること、肯定を与えることが大切だと主張したのが小児精神科医のウィニコットです(『遊ぶことと現実』岩崎学術出版)。これに、神戸の連続殺傷事件の加害少年「酒鬼薔薇聖斗(サカキバラ・セイト)」や池田小学校事件の宅間守の悲惨な生い立ちに重ねて発言したのは、芹沢俊介です。岩波新書で『家族の意志』が出たので、ぜひ一読をお薦めします。
 
 芹沢俊介さんたちの勉強会では、「7歳までは(がんぼを含めて)神のうち」が合言葉になっているそうです。しかし、その無償の愛を注ぐところ、わがままを受けとめる場所は、必ずしも生まれた家(定位家族)でなくていい。逆に、生まれた親・家族(定位家族)でなければいけないという価値観がかえって家族を追いつめ、悲惨な結果を生んでいると主張しています。精神科医の高岡健も、今回の大阪市(大阪維新の会)の「伝統的な家族観」による子育て条例案を批判して同様のことを発言しています。

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