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　「わたしには夢がある」。マーチン・ルーサー・キング牧師が、1963年にワシントンDCのリンカーン記念公園で行った「ワシントン大行進」での有名なスピーチである。キング牧師は続けて言う。……ジョージアの赤色の丘の上で、かつての奴隷の子孫とかつての奴隷を所有した者の子孫が同胞として同じテーブルにつく日が来るという夢が。私には夢がある。今、差別と抑圧の熱がうずまくミシシッピー州でさえ、自由と正義のオアシスに生まれ変わり得る日が来るという夢が。私には夢がある。私の4人の小さい子ども達が、肌の色ではなく内なる人格で評価される国に住める日がいつか来るという夢が。……

 

　くれんども、「死んでも病院には戻りたくはない」と声をあげた2人の筋ジストロフィー障害をもつ青年と、「入所施設以外の行き場をつくりたい」という家族の願いから、2002年の8月に法人格を取り、翌年4月に事業所を開設した。かえりみれば、それから10年が過ぎていた。

 

　先日、4月6日に当事者と家族と職員だけの10周年記念セレモニーを開いた。それぞれが思いを語り、若い人たちが編集した記念DVDを鑑賞し、1周年を迎えたパン屋「BROTO」で焼いたかりんとう饅頭と記念誌『10年史』を配布しただけのささやかなセレモニーだったが、感慨もひとしおの集まりになった。

 

　2人の当事者と3人のスタッフから始まった事業所も、今は月にして110人の利用者とその家族、56人のスタッフになった。行き場をつくり、やることをつくり、休むところをつくり、そして今、帰るところをつくろうとしている。

 

　何のためにそれらをつくらなければならないのか。キング牧師ではないが、それは差別があるからである。特別でない生活をするために、まだ特別なことをしないといけない時代である。