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理事長コラム~今月のひとこと~

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一木一草に宿るもの ~名張毒ぶどう酒「えん罪」事件から~

2013-06-27
 「一木一草に天皇制がある」と言ったのは、中国文学者の竹内好だったか。このたび、映画『約束 名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯』や『名張毒ぶどう酒事件死刑囚の半世紀』(岩波書店)を読んでいて、そのことばを思い出した。日本的事大主義、松江澄さん(元原水禁常任理事)のことばで言えば「日本的集団主義」と言い換えてもいいかも知れない。理由は二つある。
 
 この事件は、戦後の裁判で唯一「無罪から死刑」への逆転判決となった事件である。事件から52年、7回にわたる再審請求が行われ現在も審理が最高裁で続けられているが、裁判所自身が、強要された「自白」を唯一の有罪証拠として採用し「棄却」を維持し続けている。その理由は、次のエピソードに明らかである。2005年に再審開始決定を出した名古屋高裁の小出裁判長は、再審開始決定後なぜか「辞職」し、検察の異議申し立てによって再審開始決定を取り消した後任の門野裁判長は、その直後なぜか東京高裁へ「栄転」している。裁判所のなかでも、「先輩」の出した決定をくつがえすには職を辞さなければならないほどの事大主義が横行していることを、このエピソードから読み取ることが出来る。
 
 もう一つの理由。犯人は、小さな集落(25戸程度)の村人以外にいないことは明らかになっている。また、犯人として逮捕された奥西勝さん(当時35歳)が犯人でないことも明白である。しかし、村人は、奥西さんが逮捕された途端、問題のぶどう酒が会長宅に運び込まれた時間帯を中心に、重要な証言をひっくり返し(警察によってひっくり返され)始める。そして、いっせいに奥西さん(一家)の糾弾を始める。
 
 この二つのエピソードを、私は他人事として論評することが出来ない。一方で、この事件が明らかにえん罪であることを知っている私もいる。村人は私自身でもある。…この国の「一木一草」、えん罪や抑圧に加担することもあれば、良心のきずなをつくることもある。
 
 死刑囚として87歳になった奥西勝さん、昨年の6月、肺炎をわずらい、名古屋拘置所から八王子医療刑務所に移送され、現在寝たきりの生活が続いている。1961年の事件から52年が経過している。

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