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理事長コラム~今月のひとこと~

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事実から何を学ぶか

2013-09-26
 童話『かちかち山』では、最後にタヌキがうさぎにだまされて穴の開いたどろ舟に乗り命を落とす。小学生のころだったか、どうして老夫婦に意地悪したくらいで、背中に火をつけられてやけどを負わされたり、どろ舟に乗せられて殺されるのか不思議だった。私たちが読んでいた童話は、実は明治以降子どもには残酷だとして民話が改ざんされたものだった。元の民話では、タヌキがお婆さんを殺して、帰って来たお爺さんに「ババア汁」にして食べさせたことが、その後執拗なカタキを打たれる発端になっている。室町時代にはすでにあったというこの民話は、日本における食人(カニバリズム)の風習も反映していると言われる。
 
 もう一つ、同じ中世に作られた説教節『さんせう太夫』(童話『安寿と厨子王』)の物語も、同様である。説教節では、安寿は拷問によって非業の死を遂げるが、童話では弟厨子王を逃がすために、安寿は沼に身を投げる。非業の死を遂げたのでなければ、最後に国司となった厨子王が、山椒大夫とその子三郎を鋸挽きの刑(竹鋸でゆっくりゆっくり首を挽く刑)に処せられることには合点がいかない。
 
 8月に起きた、日本軍による首切りや妊婦の腹裂きなどの描写が残酷だとして、『はだしのゲン』を閉架措置にした松江市教育委員会の一連の報道を見ながら、学生の頃に読んだそんな話を思い出した。「残酷さ」や「死」という事実を身近な暮らしから排除していき、より大きな残酷さを生んだというのが、明治以降の近代化だったのかも知れない。

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