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理事長コラム~今月のひとこと~

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ファンタジーか希望か

2020-11-17
 「社会保障制度改革推進法」は財政逼迫を理由に、社会保障、社会福祉の理念や実態を再び家族扶養、自助努力に押し戻し、公的責任を限りなく縮小する方向をあらわにしている。
 
 こういうなかで文科省からの概算要求を見ると、いじめ・不登校関連でその大半を占めたのがスクールカウンセラー拡充事業。日常的な相談体制を整備するため、公立中学校のうち1000校を現在の週1日から週5日配置に切り替えていくという。セットで、16億円もかけて「新・心のノート」をはじめとする道徳教育を充実していくという。
 
 約13万人の子どもたちを不登校にし、アスペルガー障害だの、ADHDだの、統合失調症だのと自己責任という名のラベリングをしながら、この上何を抑え込もうとしているのだろうと、素朴に思ってしまう。この学校化社会、どこまで縺れていくのだろうか。
 
 意外な話だが、明治の初期のころの庶民はたいそう機嫌がよかったらしい。いつもにこにこして、晴れ晴れしかったと大森貝塚の発見で知られる米国の博物学者エドワード・モース(1838~1925)が『日本その日その日』に書き残しているという(13.11.4付天声人語)。その一部を引用して新年のあいさつに代える。
 
日本は子どもたちの天国だと、モースは繰り返し強調する。大切に注意深く扱われ、多くの自由を与えられつつ、自由を乱用はしない。その笑顔からして、彼らは「朝から晩まで幸福であるらしい」とまで書いている。偏見に曇った眼鏡よりは共感に満ちたバラ色の眼鏡を。そう信じたモースの記述はくすぐったい感じもするが、失われた時代の貴重な証言だ。…赤ん坊をおぶった子らがにらめっこをする一枚に頬が緩む。障子紙をぼろぼろにしたイタズラ小僧たちも笑いを誘う。
 
 明治日本がただの異空間と映るか、それともそこに懐かしさやつながりを感じるか。ただの昔と見るか、異郷の地に降り立った外国人のファンタジーと見るか、あるいは、もう一つの世界の希望を読み取るか、読む者によって、捉え方はそれぞれ違って来るだろう。

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