理事長コラム~今月のひとこと~
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残されたしごと
2014-07-24
わたしが一番きれいだったとき/街々はがらがらと崩れていって
とんでもないところから/青空なんかが見えたりした
教科書にも載っているこの有名な詩の作者茨木のりこは、私の母の1歳下である。娘時代は戦争だった。敗戦の年、母はちょうど20歳だった。
戦争という「偶然」がなければ、福岡の炭鉱町からこの広島の地にやって来ることはなかったし、当然私というものも生まれることはなかった。2歳上の姉が当時崖の上にあった借家から転がり落ちて障害を持つこともなかっただろうし、そしてたぶん、わたしがいまの仕事にかかわっていることもないだろう。
酔って、戦地に行った話をする父の顔は恐かった。ただただ怖かった。耳をふさぐことも出来ないわたしは、無力だった。その父親の世代の戦争責任を、兄の世代、団塊の世代は追及した。
その兄の世代、団塊の世代がいま、前期高齢者に大量になだれ込んでいる。そして、この世代が後期高齢者となる「2025年問題」が、大きくクローズアップされている。
それぞれの時代を生き、対立をしたそれぞれの世代が、いま同じ舟に揺られている。兄の世代を斜めに見上げ「内向の世代」と自閉していたわたし自身も、還暦を過ぎてしまった。しかし、そのそれぞれの世代のだれにとっても他人事でない、主権者として否応なく向き合わざるを得ない最期のしごとが待っている。