理事長コラム~今月のひとこと~
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春と修羅
2015-04-08
4月1日、新しい年度の口開けに安登の新ジョバンニのショップがオープンした。朝のうちは雨が振り込んだが、客足はまずまずだった。辺境と言われる地に、小さくともなくてはならない拠点バザール(交差路・市場、イーハトーボ)の1つを作るというくれんどの理念の一つを、重度と言われる障害者市民を中心に、地域のみなさんの力をお借りして是非実現したい。
ところで、くれんどの各事業所には宮沢賢治の童話から名前をちょうだいしたものが多い。「ジョバンニ」もその一つである。ご存じ『銀河鉄道の夜』の主人公である。宮沢賢治、没後80年を経ても人々を惹きつけてやまないが、よく読んでみると、この『銀河鉄道の夜』も然り、難解なものが多い。
その理由について、岩手という「辺境」の地に生きながら、宇宙的な広がりをもつ心象風景をスケッチしていることに由来すると指摘する声もある。有名な『春と修羅』の序には、そのことを裏付けるかのように自ら「かげとひかりのひとくさりづつ/そのとほりの心象スケツチです」と告白している。
その「春と修羅」の冒頭は、こんな出だしから始まる。
心象のはいいろはがねから/あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地/いちめんのいちめんの諂曲模様
(正午の管楽よりもしげく/琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ/四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする/おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
(風景はなみだにゆすれ)
開店の門出に立ち会い、降りしきる雨の空を見上げながら、ふと「4月の気層のひかりの底を、つばきし、はぎしりしながら、独りの修羅として」歩き回る賢治の心象風景を想像した。