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理事長コラム~今月のひとこと~

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蛙の季節

2015-05-28
 蛙の啼き声がし始めると、思い出す詩がある。草野心平の「生殖Ⅰ」から。
 
るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる
 
 この蛙の詩にはいろんなバージョンがある。「●」1つだけというのもある。究極の自由詩と言われる所以である。
 
 草野心平は、今の福島県いわき市に生まれ、1920年代には、雑誌『銅鑼』に宮沢賢治や八木重吉を誘い、その紹介に努めたことでも知られている。その後、中原中也らと『歴程』を創刊する。
 
 『歴程』という名前を出したのは、自分の話に引っ張るためである。40年も前の学生時代に、この草野心平が主宰する「歴程」のセミナーに参加したことがある。九十九里浜で開かれた2泊か3泊のセミナーで、この酒ばかり呑んで暮らしているという伝説の詩人の顔を見た。草野心平はその程度の記憶しかないが、ある夜この詩人の傍に座っていた女性と、その後2年ほどお付き合いした。お付き合いと言っても、ときに食事をした程度である。植民地だった中国東北部からの引揚家族の1人で、当時英語の通訳の仕事をしていた。無謀にも英会話を習いかけて、ちんぷんかんぷんになり、それがまた言い出せずにそのまま疎遠になったという他愛もない話。
 
 調子乗りついでに、もう1つエピソードを紹介する。心平が世に送り出したと言ってもいい宮沢賢治は、紹介するまでもない詩人だが、もう一人の八木重吉の名前を知っている人は少ないと思う。私は高校時代に初めて知った。当時、肋膜を患い休学していた友人をサナトリウムに見舞ったとき、その友人から、その詩人の名前を知らされた。たとえば、こんな詩。
 
ああちゃん! /むやみと/はらっぱをあるきながら/ああちゃん と/よんでみた/こいびとの名でもない/ははの名でもない/だれのでもない 
 
 この八木重吉は、27才で早世している。この詩人を教えてくれた友人はいま、定年退職後、くれんどの仕事を手伝ってくれている。

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