理事長コラム~今月のひとこと~
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発達信仰と寄り添うことと
2015-11-24
新年なので少し大きな話題にします。ヒトが木から地上におりたち二足歩行を始めたのが400万年前、ことばを獲得したのが4万年前と言われます。この人類史を100メートルに表すと、ことばの獲得は1メートル、20世紀から今世紀で2.5ミリ、戦後は1.4ミリほどにしかなりません。あまりに短くてイメージがつかめないので、ことばの獲得1メートル分をさらに仮に100メートルに換算してみると、20世紀の始めからは25センチ、戦後は14センチ、それでも靴の1足分にもなりません。
私が40年前に学校に就職したときは、ガリ版でプリントを作っていました。つぎの年には、ボールペン原紙になりました。10年後和文タイプライターが20数万円で買えるようになったときは、すぐに無理をして買いました。その2~3年後、3行表示のワープロが13万円ほどで売り出されたときは、それにも飛びつきました。その数年後にはパソコンの時代がやって来ました。…たった40年ほどでも、これほどの変化です。
しかし、人間以外の生き物は、数万年の単位で区切ってみても、その生活の仕方そのものには、さしたる変化がないように見えます。
それに引き換え人間は、ことばを交わすことによって途方もなく不安定な関係に身を委ねたということが言えるのかも知れません。そして、人間的な時間・テンポはどんどんはやくなり、それでも発達信仰に歯止めをかけられなくなっているようにも見えます。この不安定さに、ヒトはいつまで耐えられるのでしょうか。
こじつけがましい最後になりますが、無理やりひと言付け加えれば、目の前の障害者の暮らしに「寄り添う」ということの中に「発達信仰」を克服するヒントの一つが隠れているように思えます。