理事長コラム~今月のひとこと~
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敵を殺す/世の中は友だちばかりになる?
2017-01-26
敵を殺す/世の中は友だちばかりになる
敵をつくる/わが組織は固まる
上の詩は、エーリッヒ・フリードの詩の一部のパロディです。仮想の敵をつくるというのは、身内の内外を問わず、だれかが組織を固めようとするときに、しばしば使う手法です。有名なところでは、ナチスは、アーリア民族(ゲルマン民族)の優秀性、自国民意識をあおるために、ユダヤ人をスケープゴートに選びました。中国新聞の論説委員だった松江澄さんは、(軍国主義時代の)日本人の特徴を、「日本的集団主義」と呼び、付和雷同する傾向の強い日本人の風潮に警鐘を鳴らしました。
これらの傾向は、残念ながら現在において克服されているどころか、むしろ強まっていると感じることがあります。自身脳性マヒ当事者でもある熊谷晋一郎によれば、競争や効率、成果を求める社会にあっては、己の孤立や不安を、より弱い他者への敵意にすりかえる傾向が見られ、集団によるイジメや派閥化の中にも、そのような意図が内在する場合があります。
逆に言えば、より近い他者への敵意をあおれば、自らの派閥や意図を通せる組織を作ることができるということになります。これを阻止、あるいは抑止する力になるのは、くれんどの場合で言えば、当事者の置かれた現実を軸に置いた議論をするよりほかありません。くらしの現実に学ぶということはそういうことです。当事者を「敵」にするのは論外です。いずれ、自分の首を絞めることになるでしょう。