理事長コラム~今月のひとこと~
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歴史に学ぶ
2017-06-28
先日、社会福祉に関するコンパクトな戦後の歴史と法制度について聞く機会があった。戦後の福祉制度の成立をふり返るいい機会になった。
福祉系の国試を受けた人は、「せい・じ・し」(政治史)あるいは「じ(っ)し、せい」(実施せい)という語呂に覚えがあるだろうか。戦後すぐに成立(施行)した福祉3法と呼ばれる旧生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法の覚え方だ。
・1946.10.1旧生活保護法
・1947.12.12児童福祉法
・1949.12.26身体障害者福祉法
いい機会になったというのは、これらの法律の成立(施行)時期だ。旧生活保護法などは、1947年5月3日に施行された日本国憲法よりも早く成立している。これに1948年に国連で採択された世界人権宣言を並べてみれば、一連の法制度・宣言の背景には、第2次世界大戦という大きな戦争による犠牲があることが分かる。通底するキーワードは、すべての人間が生まれながらに持っている「基本的人権」という理念だ。
しかしながらここ最近、多大な犠牲の上に日本人いや人類が獲得したこの「基本的人権」を、なし崩しに圧殺しかねない法律が、この日本で相次いで成立している。通信傍受法、特定秘密保護法、安保関連法制に続いてついに、6月15日の朝、国内外の懸念をよそに共謀罪法案が成立した。
福祉の現場にいる私たちだからこそ、あらためてこれらの法制度の意味するものは何なのか、歴史に学ぶときが来ていると思う。相模原障害者殺傷事件の「障害者なんかこの世の中からいなくなればいい」という、植松聖にシンボリックに現象した社会のいら立ちが身体に貼りついて離れない。