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理事長コラム~今月のひとこと~

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自立と「自立」

2018-03-12
 4月からの介護保険の報酬改定で、「自立支援」を進める事業者への報酬が手厚くなります。そうすると、当然、効果の上がらない高齢者は事業所からも嫌われる存在となります。ただでさえ採算が取れず潰れていく事業所に、「がんばらない高齢者」に手をかける余裕はないからです。
 
 「健康寿命」が延びることに、当事者の一人としては期待を持たないわけではありません。しかし、国が進めようとしているのは、一般的に言えば、不可逆的な老いの下り坂を歩んでいる高齢者を、本音ではムダな存在とし、表では「自立」を御旗にした訓練を強要し、コスト削減の圧力をかけようとしていることです。考えてみれば、この介護保険はもちろん、近年声高に叫ばれている生活保護、生活困窮の場における「自立支援」ということばは、この文脈で使われています。
 
 障害者総合支援法には、かろうじてこの「自立支援」という文言は入っていません。なぜでしょう。よく引用する東大先端研の小児科医であり車イスユーザーでもある熊谷晋一郎は、「自立と は依存である」と言い、自分の受けて来たリハビリ=自立支援を「訓練地獄」として批判しています。
 
 また、脊髄性筋萎縮症で、12歳から人工呼吸器を使っている自立生活センターさっぽろの佐藤きよみは、つらかったのは、曲がらない足を曲げ、曲がらない手を曲げるために、大人たちに「自立するため」「あなたのため」と強要され続けたこと、呼吸器を外す訓練で「外せたら自立できる」と言われ続けたことだといいます。
 
 これらが、総合支援法にかろうじて「自立支援」という文言が入らなかった一つの大きな理由です。
 
 その総合支援法も、近い将来、ふたたび介護保険に「自立」概念を含めて吸収されていく懸念と、内側においても、過剰な一般就労支援と療育支援が横行し、「自立」概念が、ここ40年近くの当事者を中心としたいのちをかけた告発とその成果を、なし崩しに掘り崩していく現実が、実は進行していることを考えないわけにはいきません。

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