理事長コラム~今月のひとこと~
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ホームかぷかぷ開所
2018-05-12
くれんどの事業所名は、宮沢賢治の童話から取ったものが多い。この4月にやっと開所したグループホーム「ホームかぷかぷ」もそうだ。この『やまなし』が、宮沢賢治の数少ない生前に発表された童話だったことを、1月に直木賞をとった門井慶喜の『銀河鉄道の父』を読んでいて知った。
宮沢賢治の童話は愛読されている割には、分かりにくいものが多い。この『やまなし』もそうだ。初めのほうを紹介してみる。
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。
一、五月
二匹の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼(ハガネ)のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』
つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽっぽっぽっとつづけて五六粒泡を吐きました。それはゆれながら水銀のように光って斜めに上の方へのぼって行きました。
そもそも、この「クラムボン」からして何者なのか、何回読んでも分からない。それでも、このよく分からないところに惹きつけられるから不思議だ。
「ホームかぷかぷ」のメンバーも、先行きはよく見えないけれど、ともかく、「かぷかぷわらい」ながら、そのスタートを切った。