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理事長コラム~今月のひとこと~

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母体保護法は優生保護法の何を変えたのか

2019-06-12
 旧優生保護法(1948年~96年)の下で、障害のある人らに強制的に不妊手術が行われた問題で、4月24日、参院本会議で救済法案が全会一致で可決、成立した。これに対し被害者側は、前文のおわび(国家責任が不明確)や一時金の額(320万円)が納得できないとして、訴訟を継続するという。
 
 何度でも言うが、国の責任を明確にする以前に、現行の母体保護法下においても、障害(遺伝性疾患)を理由に93%以上が実際に抹殺され、なしくずしに適用病院が拡大されている現実をなぜ問わないのか不思議でならない。根拠は存在するのか。
 
 旧優生保護法では、第1条に「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」とあり、さらに第4条と第12条には、遺伝性の疾患や障害を持つ人、精神疾患を持つ人まで、本人の合意がなくても優生手術ができると明記されていた。
 
 現母体保護法では、これらの条文は削除され、「妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」(3条、14条)以外の表現は見当たらない。現在認められているダウン症など3種類の遺伝性疾患が、なぜ母体を損なうのか根拠は何も明らかにされていない。また、ダウン症協会でのアンケートで、8割もの家族が生まれて来て良かったと回答している事実や、遺伝性ろう者が誇りをもって生きている現実は何も知らされない。こうして、空疎なお題目と「救済」だけが声高に叫ばれている。
 
 くれんどに働いている私たちが今問われていることは、障害をもって生まれて来た人たちが、社会のお荷物などではなく少数者(マイノリティ)に過ぎないこと、一人の市民として生きられる社会的基盤づくりの一翼を担っていること、そのことを発信できるかどうか―ということではないのか。

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