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理事長コラム~今月のひとこと~

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非常時と障害者

2020-10-18
 「良い言葉がみつからないのですが、(新型コロナ騒動で)淘汰されてしまうんじゃないか、と感じるんです」。東京都内で、10人前後のヘルパーを入れて一人暮らしをする脊髄性筋萎縮症の長谷川晴基さん(44)は語る(20.6.19付朝日)。
 
 私たちの社会は、この当事者の不安にどう応えるのか。海外メディアによると、実際に、米アラバマ州は人工呼吸器が不足した場合、障害や病気のある人にはつけない可能性があるとする指針を策定し(後に撤回)、英国立医療技術評価機構が公表した救命医療の指針に対しては、「身の回りのケアを他人に頼る人が治療を受けられない恐れのある内容だ」と障害者の親や人権団体が抗議し、修正された。また、ルーマニアの障害者施設における集団感染で、職員は医療機関で治療を受けたが、入所者は医療不足の施設に残され、対応のちがいへの説明もなかったとして、障害者団体がルーマニア政府に抗議するという事態も起きている。日本においても、医療倫理を研究する医師や弁護士のグループが3月末、議論喚起のためとして、呼吸器不足時を想定した試案を公表している(20.6.24朝日)
 
 非常時に『非常時だから仕方ない』と排除がいったん容認されれば、加速したり、危機が過ぎても定着しかねない不安を覚える。日本赤十字社のホームページに、「病気」が「不安」を生み、「差別」を伝染させる。そして、人や社会のつながりを壊す―とあった。その通りだと思う。
 
 話はそれるが、東日本大震災では、障害者の死亡率は全体の死亡率の2倍だったと言われるが、厚労省は調査をしようとしていないので本当のところは分からない。NHKの調査データから一部の市町村の実態が読み取れる。女川町の全死亡率7.01%に比して、聴覚障害者の死亡率は22.5%、肢体不自由者は18.45%、南三陸町では全死亡率3.82%であるのに、視覚障害者では14.29%と、3倍前後の驚くべき数字を見ることができる。
 
 戦争になると排除は、顕著になると言うよりは極まる感じだ。20万人の障害者がガス室で殺されたナチスのT4計画、日本でも穀潰し、非国民としてさらに隔離を強化させた。戦争が最大の人権侵害と言われるゆえんである。人々の不安や恐怖が、障害者に対する人権侵害や差別、抹殺を加速させている。
 
 淘汰されるかも知れないという冒頭の長谷川さんの不安が、実は健常者の不安の裏返しだということに気がつけば、もしかしたら、負のスパイラルは止められるかも知れない。

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