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理事長コラム~今月のひとこと~

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老いる意味

2022-02-15
 作家の森村誠一は、80歳を過ぎたある朝、突然うつに襲われた経験を著書『老いる意味』に書いている。「早朝、いつものようにベランダに出て、身体を動かそうとしたとき、どんよりとした違和感を覚えた」のが発端で、その朝以降長いトンネルの中へ入ることになる。病院では、老人性うつ病と認知症を疑われた。

 後から考えれば、多忙な仕事から来ていたものだが、さすがに作家というべきか、克服するにも、世間的に言えば尋常ではないマッチョ的な闘いを重ねている。主治医がいいと言うものはすべて試し、「脳からこぼれる言葉を拾うために」、新聞のチラシの裏などにも思い出す言葉があるたびに書き出し、「写経」のようにもなった紙を家の壁などに貼りまくって始終見られるようにしていたという。この涙ぐましいエピソードは面白かった。

 後半は、老人性うつ病を「塗炭の努力で克服した」作家が、「余生」「死」「健康」「未来」をキーワードにして、老いをどう受け止め生きているのかという体験的教化的エッセーで読み飛ばしたが、面白いフレーズもあったので、紹介したい。

「どんなに歳をとっても、まず考え方を変えるのがいい。過去と未来をつなぐ最先端が現在である―と考えればいいのだ」

 最先端にいるというのは、未来に接続していながら、過去にもつながっているということだ。そういう最先端にいることを意識したとき、問われるのは「過去を見るか、未来を見るか」である。過去に目を向ければ、今の自分がいちばん年老いているが、未来に目を向ければ、いまの自分がいちばん若い。

 要するに「自分次第」ということが、この作家の言いたいことだが、「最先端」ということばと捉えかたが面白かったのと、確たる作家の地位があり、しかもそれを克服したのならなおさら、カミグアウトすることもなかっただろうに、うつ病と認知症の診断を受けて、主治医に泣き言を言ったり、ジタバタうろたえている自分の姿を率直に書いている前半が良かったので紹介した。

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