事務局長コラム

障害を通して視えてくるもの

2026-07-31

 呉市での、今年度第1回介護職員初任者研修が始まりました。この研修は呉社協が主催し、市内の多くの福祉関係事業所が講師として参画しています。くれんどは「介護における尊厳の保持・自立支援」(5/28)と「障害の理解」(6/3)2コマを担当しました。今回は、その講座からの気づきを報告したいと思います。

 当然のことながら、講師の私は受講者のみなさんに、この業界で働いてほしい、そして福祉の仕事にやりがいを感じてほしいという思いで話をしています。そのために、私が特に意識していることがあります。

 まずは、残念ながら私たちの現場は「虐待とバーンアウト」という現実と切り離せない関係にあることを伝えています。そして、その背景にあるものを一緒に考えていきます。虐待の根底には、私たち自身のなかに潜む優生的価値観や、多忙さなどの構造的要因が隠れています。こうした要因を自覚すること、当事者の痛みを知ること、さらには「障害は周りにある」とする現在の法制度や倫理綱領を学ぶことは、自分自身が取り込まれている社会意識や構造的暴力を相対化する力になります。

 そしてもう一つ、重要だと感じているのは、障害の見方、ひいては社会の見方を、障害者とのつき合いや学びを通して変えられるかどうかという点です。「障害の理解」の講義では、特にこの点を意識しました。

 一般的な障害理解は、ICF(国際生活機能分類)を掲げながらも、依然として医学的側面や生活障害など、いわゆる医学モデルに基づく内容が中心です。そこで私は、個々の障害についても「もう一つの見方」があることを紹介しています(例:人工内耳と手話)。当事者自身が発しているオルタナティブメッセージは、優生的な価値観を乗り越え、多様な世界のありようを支える力になり得る―そのことを、受講者と共有したいと考えています。

 生命史の分野でも、生物多様性が低下すると生態系の崩壊リスクが高まると言われています。社会においても同じです。障害者というマイノリティの声をアドボケート(代弁)できるのは、目の前でかかわっている私たち支援者です。そうした役割を担える機会に恵まれていることは、実はとてもありがたいことだと感じています。

(小河 努)

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