“支援される側”から“教える側”へ
2026-03-30
2026年2月17日、トリニティカレッジ広島医療福祉専門学校にて、出前授業を行いました。講師として参加したのは、地域で一人暮らしをしている中井泰治さん・小林真衣さん(ともに車いすユーザー)、そして介助者であるくれんどスタッフ3名です。
今回のテーマは、「当事者の地域での生活のリアル」「そこに関わるスタッフの思い」そして「実際の介護技術」。学生のみなさんに、制度や技術だけでなく、“障害者が実際に地域で暮らすとはどういうことか”を、当事者本人の言葉で届けることを大切にしました。
■「地域で生きる」ということ
授業ではまず、中井さんと小林さんそれぞれのこれまでの人生や、自立生活に至るまでの歩みをお話ししました。
中井さんは、幼少期から施設と実家を行き来する生活を送りながらも、「親亡き後」を見据え、自ら町と交渉を重ねて自立生活を実現してきました。当時は今のように制度も整っておらず、何度も役場に足を運び、サービス時間の確保を求め続けました。
小林さんもまた、ご家族の体調の変化をきっかけに一人暮らしを決意。周囲の不安の声を受け止めながら、21歳で地域での生活をスタートさせました。介助の時間が一日の中で細かく区切られ、トイレを待たなければならない場面もあったといいます。また、介助者が安定せず、生活そのものが揺らぐ時期もあったそうです。
しかし2人が選んだのは、「施設か家族か」という二択ではなく、“地域で、自分で選びながら生きる”という生き方でした。
■制度と暮らしのあいだ
重度訪問介護や喀痰吸引などの制度の説明も行いました。しかし、制度があるだけでは暮らしは成り立ちません。買い物で何を選ぶか迷う時間。支援者が「半歩後ろに下がる」ことの意味。時にはヒヤリとする出来事や、笑い話になる失敗談。制度・当事者・介助者がどう関わり合っているのかを、具体的なエピソードを通して伝えました。
■実技体験 ― “教科書ではわからないこと”
実技では、電動車イスを押す介助、服の着脱、車イスからベッドへの移乗などを体験してもらいました。車イス介助では普段一般的な車イスしか押すことがないようで、特に中井さんの電動車イスは重量や押すときの視野の狭さなどで苦戦している学生も多くいました。
それ以外にも中井さんは上着の着脱介助、小林さんが着脱と立ち上がりからベッドへの移乗を実演し、当事者自身が体を使って何度も実演する形なので学生の皆さんは緊張しながらも真剣に取り組んでいました。学生同士で行うのと違い、実際に当事者で体験することで、声かけの重要性や身体の使い方の難しさを実感している様子が印象的でした。
担当の寺藤先生からは、「13年勤務していますが、当事者の方が講師として来られ、実際の介助体験までさせていただいたのは初めてです。本当にありがとうございます」との言葉をいただきました。
■未来の支援者へ
最後のしめくくりに、これから介護・福祉業界へ就職していく学生のみなさんへエールを…と先生からリクエストがありました。
小林さん「私が一番大切にしているのは、私自身とヘルパーのお互いが、その時間を楽しむということです。そうでないとお互い長続きしないと思う。合う・合わないはあると思いますが、楽しむっていうことを一番に考えてもらえたらと思います」
中井さん「わからないことや、失敗することもあると思います。でもそのままにせず周りの人に聞いたり、どうしたらいいかを考えながら介助に入ってもらいたい。当事者本人でもいいし、先輩でもいいので、聞いてもらえたらいいと思います」
と、メッセージが届けられました。
■“支援される側”から“社会の担い手”へ
今回参加させてもらい、当事者が“支援される側”ではなく、“教える側”として立つ意義を改めて感じる1日でした。
中井さんや小林さんは講座講師などで社会とのつながりを持っていますが、多くの当事者は自宅と事業所の往復が中心で、家族や介助者以外との接点が少ない現状があります。今回の出前授業は、学生にとっての学びの機会であると同時に、当事者にとっても社会との新たな接点を生み出す場となりました。
「介護=介護保険」という枠にとどまらず、障害分野だからこそ実現できる学びや価値があると思います。今後も中井さんや小林さんはもちろん、2人以外の当事者も講師として活躍できる仕組みを作り、仕事として成り立つようにしていきたいと思います。当事者が社会の担い手として出会いを生み出しながら、収入を得られる形を目指していきたいと考えています。
(くろかわ)
今までのこと、そしてこれから
2026-02-13
ジョバンニとカンパネラは、それぞれで毎月1回、「しゃべろう会」を開いています。しゃべろう会ではメンバーそれぞれの障害についてや自分たちが日ごろ感じている差別や偏見のこと、自立生活をしているメンバーの体験談など、毎回テーマを決めて話し合ったり学習会を開いたりしています。運営もメンバー(当事者)が中心となって行います。
話すことが好きなメンバーばかりではありません。人前では緊張してうまく話せないメンバーや、話すことに苦手意識があるメンバー、そもそも話すことができないメンバーなど、当事者同士でも「話すこと」に対して温度差があります。運営に携わっているメンバー自身も、毎回悩みながらテーマを決めたりやり方を工夫したりしています。
年に2回、ジョバンニとカンパネラが合同で開催する「合同しゃべろう会」があります。12月10日、ジョバンニにて、今回で5回目となる「~今までのこと・そしてこれから~」をテーマに、合同しゃべろう会を開催しました。この企画は、「これまでの生き様を知り合い、理解し合うことで、互いに認め合い、支え合う関係がより深まるのではないか」、そんな思いから5年前にスタートしました。
これまでの人生で
話すことが好きなメンバーばかりではありません。人前では緊張してうまく話せないメンバーや、話すことに苦手意識があるメンバー、そもそも話すことができないメンバーなど、当事者同士でも「話すこと」に対して温度差があります。運営に携わっているメンバー自身も、毎回悩みながらテーマを決めたりやり方を工夫したりしています。
年に2回、ジョバンニとカンパネラが合同で開催する「合同しゃべろう会」があります。12月10日、ジョバンニにて、今回で5回目となる「~今までのこと・そしてこれから~」をテーマに、合同しゃべろう会を開催しました。この企画は、「これまでの生き様を知り合い、理解し合うことで、互いに認め合い、支え合う関係がより深まるのではないか」、そんな思いから5年前にスタートしました。
これまでの人生で
- どんな思いを抱いて生きてきたのか
- どんな生きづらさを経験し、それをどう生きる力に変えてきたのか
- どんな人との出会いがあり、どんなつながりが生まれたのか
- これからどんなくらしをしていきたいのか
このような問いをもとに、今年は4人のメンバーが発表しました。
4人目の発表者である平野さんの「私の夢」の最後には、「私にも友だちが欲しい」という言葉がありました。参加者のみなさんも、「どうやって友だちができたのだろうか」「どこで出会い、どのように関係を深めてきたのだろうか」と気になったのではないでしょうか。
今回をきっかけに、小グループに分かれて、「友だちをつくるためには?」「どうやって友だちができた?」というテーマで話し合いをしました。一人ひとりの意見を真剣に聞くメンバーや、自分の経験をもとに話してくれたメンバーもおり、友だちとの出会いや関係づくりについて、それぞれの思いを共有する時間となりました。
■参加者の感想より
「おはなしがおもしろかった」「気持ちが伝わってきた」「発表者の思いが言葉にのっていた」など、発表を通して心が動かされたという声が多く寄せられました。また、「くれんどに出会えたことが幸せ」「昔の話や将来の夢が聞けてよかった」「知らなかった過去や今の姿を知ることができた」といった感想もあり、お互いをより深く知る機会になったことでしょう。
中には、自身のいじめ体験や病気と向き合っている思いを重ねるメンバーもおり、「思いや夢を出し合える場の大切さ」「気持ちを出せる場がもっと必要だと感じた」という声もありました。
一人ひとりの人生や夢に耳を傾け、共感し合うことで、人と人とのつながりの必要性や大切さをあらためて感じる時間となりました。
(おはま)
今回をきっかけに、小グループに分かれて、「友だちをつくるためには?」「どうやって友だちができた?」というテーマで話し合いをしました。一人ひとりの意見を真剣に聞くメンバーや、自分の経験をもとに話してくれたメンバーもおり、友だちとの出会いや関係づくりについて、それぞれの思いを共有する時間となりました。
■参加者の感想より
「おはなしがおもしろかった」「気持ちが伝わってきた」「発表者の思いが言葉にのっていた」など、発表を通して心が動かされたという声が多く寄せられました。また、「くれんどに出会えたことが幸せ」「昔の話や将来の夢が聞けてよかった」「知らなかった過去や今の姿を知ることができた」といった感想もあり、お互いをより深く知る機会になったことでしょう。
中には、自身のいじめ体験や病気と向き合っている思いを重ねるメンバーもおり、「思いや夢を出し合える場の大切さ」「気持ちを出せる場がもっと必要だと感じた」という声もありました。
一人ひとりの人生や夢に耳を傾け、共感し合うことで、人と人とのつながりの必要性や大切さをあらためて感じる時間となりました。
(おはま)
育て方を探して
2026-01-14
運勢の本によると2026年は7年間の闇が晴れて、魅力が輝く年になるらしいので期待が高まる今日この頃です。
さて、くれんどでは2025年度、日中一時プリオシン・ショートとらうむには新しく責任者になったスタッフや、所属が変わり新たにプリショ所属になったスタッフがいます。任せられることが増えたこと、一緒に働く仲間が増えることはいつも嬉しく、また心強く思っています。
ただ、そんな中、自分としては大きな不安を抱えていました。それは「人の育成の方法が分からない」ということです。積極的な面談を開催すればいいのか、マニュアルを完璧に作って渡せばいいのか…。2024年度はそれらを意識して試していました。それはそれで意味はあったかなと思ってはいますが、なかなかうまくいかないもどかしさも感じていました。そして、同じ生活支援センターの中でも、引き継ぎや技能の習得に関して思うように伝わらない、難しさを感じる声も聞くことが増えました。これは決して教えられる側に問題があるという話ではなく、これまでと違い複数の新人にいっきに仕事を覚えてもらうという経験がなかったことによる、教える側である自分たちの力不足の結果だと思っています。
そんな悩みを抱えながら過ごしていましたが、同じ悩みを抱える仲間に相談を繰り返し、またネット動画や書籍でいろんな情報を知るうちに、僕の中にあった不安は、いつからかこれで知ったことをどれだけ活かせるか試してみたい! というモチベーションに変わっていきました。
さて、くれんどでは2025年度、日中一時プリオシン・ショートとらうむには新しく責任者になったスタッフや、所属が変わり新たにプリショ所属になったスタッフがいます。任せられることが増えたこと、一緒に働く仲間が増えることはいつも嬉しく、また心強く思っています。
ただ、そんな中、自分としては大きな不安を抱えていました。それは「人の育成の方法が分からない」ということです。積極的な面談を開催すればいいのか、マニュアルを完璧に作って渡せばいいのか…。2024年度はそれらを意識して試していました。それはそれで意味はあったかなと思ってはいますが、なかなかうまくいかないもどかしさも感じていました。そして、同じ生活支援センターの中でも、引き継ぎや技能の習得に関して思うように伝わらない、難しさを感じる声も聞くことが増えました。これは決して教えられる側に問題があるという話ではなく、これまでと違い複数の新人にいっきに仕事を覚えてもらうという経験がなかったことによる、教える側である自分たちの力不足の結果だと思っています。
そんな悩みを抱えながら過ごしていましたが、同じ悩みを抱える仲間に相談を繰り返し、またネット動画や書籍でいろんな情報を知るうちに、僕の中にあった不安は、いつからかこれで知ったことをどれだけ活かせるか試してみたい! というモチベーションに変わっていきました。
そんな意図を汲んでもらい、生活支援センター内に人材育成について学び、語り、試していくことを目指したチームを作ってみることになりました。12月24日に、さっそくの第1回を行いました。メンバーは今まさに多くのスタッフに頼られる立ち位置になった4名のスタッフ。皆それぞれ、人材育成や新人教育について自分は不向きだと感じていて、何で自分が?という思いがあったようです。でも、これって普通のことなんです。初めてのことは不安だし、うまくいくこともあればいかないことの方が多いくらいです。それでも、新人に成長して欲しい、この人にうまくなってほしいと願う気持ちを持てているのであれば、それがスタッフ育成のスタートラインであると思っています。
指導者に必要な姿勢を調べていくと、「共感」と「伴走」の2つのキーワードに集まっていくと自分は感じました。それは何でも知っている、分かる、出来る人が正しい指導者ではなく、今頑張っているその人に、どれだけ寄り添うことができるのか「自分のことを気にかけてくれている、一緒に考えてくれる」そんな関係を作れることが理想的です。
そしてこれは、普段のかかわりにも言えることだと思います。ついつい指示する、教える、という思考にとらわれてしまうことがありますが、本当に必要なのは人と人の付き合いであり、どんな信頼関係を作れるのかということだと思っています。そんなチームが作れることを目指しています。
(かみがき)
地域とつながる―安浦ちぃとプロジェクト2025
2025-12-19
2019年に始まったちぃとプロジェクトも今年で7年目になりました。今年も安浦小学校・安登小学校3年生児童へ、草木染めの出張授業を行いました。
2018年の西日本豪雨で安浦町は大きな被害を受けました。畑に植えていたたくさんの花も被災して枯れていきましたが、その中で奇跡的に生き残ったマリーゴールドがありました。毎年、小学3年生と一緒に「キセキのマリーゴールド」の種をつないでいます。あの災害が風化しないように、ちぃとプロジェクトは始まりました。
今年も、その種から育てたマリーゴールドの花を使って、ハンカチを草木染めする授業を行いました。輪ゴムを巻いて模様をつける工程では、子どもたち同士が「その絞り方いいね」「こうすれば面白いかも」と楽しそうに話をしながら手を動かす子どもたちの姿に、こちらまで温かい気持ちになりました。染め上がったハンカチを嬉しそうに広げる表情を見ると、この取り組みをまた来年にも繋いでいきたいと感じました。
今回は、防災レクリエーションとして、防災に関する手話を学び、車いすでの移動体験も行いました。災害時には、お互いにできることを支え合う場面があることを、授業を通して感じ取ってもらえたと思います。
私は今回2回目ということで緊張していましたが、「大丈夫だよ!」という心強い言葉をメンバーからもらい、無事に楽しみながら授業を終えることができました。
(たけまえ)
福祉就労という選択―親としての半年
2025-11-25
就労継続支援B型事業所「カンパネラ」に通い始めて半年が過ぎた。
学校が掲げる「一般就労を目指す」という方針?をよそに、私たち親子は早い段階で“福祉就労”の道を選んだ。企業見学も行かず、「自分らしく居られる場所」を望んでの決断だった。
4月、通所が始まると本人の緊張はすぐにとけた。だが、気づけば居眠りばかり。休憩室で寝たまま午後の作業に出ていなかったこともある。
「居場所があること」に感謝しながらも、「このままでいいのか」と思い悩む日々だった。
そういう中でこれまでに本気で辞めさせようと思ったのが2度ほどある。
ひとつは、学校時代に比べて外にいる時間が短くなり、生活リズムがだらけてしまったこと。ゲーム時間が増え、「もっと外に出る時間を長くした方がいいのでは」と考えた。
もうひとつはスタッフへの態度。ある人には緊張感を持って接するのに、ある人にはふざけてしまう。そんな様子を他のスタッフが私(職員でもある母)に伝えづらいのではないかと感じたとき、「このままここにいていいのか」と迷った。
家で何度も話し合い、激しくぶつかることも多くなった。
親としても職員としても、「親がどこまで開き直れるか」は大きなテーマだと思う。
迷惑をかける子どもを人に託すことの不安や心の負担は第三者が想像するよりもはるかに大きい。ちゃんとさせたいと願う親は「人に迷惑をかける」ことに対してなかなか寛容になれないからだ。
私の場合、同じ職場にいることでなおさら口出ししてしまう。
本人は「カンパネラ続投」を強く望んだ。
半年の間に堂々巡りの話し合いを何度も経て、本人も少し成長し、私自身もだんだんと開き直れたことで、落ち着きを取り戻してきた。
その間、スタッフのみなさんが本人に向き合い、居眠り対策や言葉のやり取りに丁寧に対応してくれたことも大きい。
これからもきっと悩み、迷いながらも、通所を続けていくだろう。
それはやっぱり「くれんどのスタッフ」を信頼しているから、そしてまさに私たちが構想している“新しい福祉就労の未来”に、希望を持っているからだ。
(おおもと)
学校が掲げる「一般就労を目指す」という方針?をよそに、私たち親子は早い段階で“福祉就労”の道を選んだ。企業見学も行かず、「自分らしく居られる場所」を望んでの決断だった。
4月、通所が始まると本人の緊張はすぐにとけた。だが、気づけば居眠りばかり。休憩室で寝たまま午後の作業に出ていなかったこともある。
「居場所があること」に感謝しながらも、「このままでいいのか」と思い悩む日々だった。
そういう中でこれまでに本気で辞めさせようと思ったのが2度ほどある。
ひとつは、学校時代に比べて外にいる時間が短くなり、生活リズムがだらけてしまったこと。ゲーム時間が増え、「もっと外に出る時間を長くした方がいいのでは」と考えた。
もうひとつはスタッフへの態度。ある人には緊張感を持って接するのに、ある人にはふざけてしまう。そんな様子を他のスタッフが私(職員でもある母)に伝えづらいのではないかと感じたとき、「このままここにいていいのか」と迷った。
家で何度も話し合い、激しくぶつかることも多くなった。
親としても職員としても、「親がどこまで開き直れるか」は大きなテーマだと思う。
迷惑をかける子どもを人に託すことの不安や心の負担は第三者が想像するよりもはるかに大きい。ちゃんとさせたいと願う親は「人に迷惑をかける」ことに対してなかなか寛容になれないからだ。
私の場合、同じ職場にいることでなおさら口出ししてしまう。
本人は「カンパネラ続投」を強く望んだ。
半年の間に堂々巡りの話し合いを何度も経て、本人も少し成長し、私自身もだんだんと開き直れたことで、落ち着きを取り戻してきた。
その間、スタッフのみなさんが本人に向き合い、居眠り対策や言葉のやり取りに丁寧に対応してくれたことも大きい。
これからもきっと悩み、迷いながらも、通所を続けていくだろう。
それはやっぱり「くれんどのスタッフ」を信頼しているから、そしてまさに私たちが構想している“新しい福祉就労の未来”に、希望を持っているからだ。
(おおもと)
