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理事長コラム~今月のひとこと~

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過去からの贈り物

2021-12-14
 あの汽笛/田んぼに聞こえただろう/もう/あば(母)帰るよ/八重蔵 泣くなよ(1931)

 戦前の生活綴り方教育運動の嚆矢と言われる詩だ。ときは、昭和恐慌、最後の飢饉と言われた東北大飢饉を背景にしている。子どもたちの身売りも行われた。この詩には、乳飲み子の弟を背負い、野良から帰る母を待つ兄の何かに耐える姿がくっきりと浮かび上がる。

 生活綴り方は戦後にひきつがれ、無着成恭の『山びこ学校』(1951)に結実する。これは、無着成恭と山形県山本村中学校の生徒との生活記録であり、学びの記録であり、たたかいの記録である。たとえば、なぜ家が貧しいのか、飼っている牛にかかる費用を計算(数学)したり、そのくらしを作文(日本語)にしていくその共同の営みには、教育、学びは何のためにあるのかという原点を考えさせられる。

 綴り方教育運動の一つの流れは、私自身の実感では、70年代からの解放教育・人権教育の大きなうねりにつながっていったように思う。私が就職した70年代後半の現場では、「さらに深くふところへ」とか「埋もれ火を吹く」、「小さきものを撃つな」などのフレーズが、さかんに教育研究集会などの場で言われていた。部落解放運動の中から、当時の県の教育長が「同和(解放)教育をあらゆる教育の基底にすえる」と明言したことも大きかった。

 (被差別部落や在日コリアン、障害者という社会的少数者の)「差別の現実に学ぶ」というスローガンは、その後の養護学校義務化反対闘争や元号法制化反対闘争、日の丸・君が代強制反対闘争の、拠りどころにもなっていった。

 これらのことが政治的に先鋭化されるにつれ、90年代末に広島県の教職員組合は、当時の文部省から直接「正常化」の名の下に大弾圧を受けるところとなるが、差別の現実に学び、「いと小さき者とともに」という綴り方運動を源流とする解放教育の精神は、「地域の中で生きる」というくれんどの覚悟にも脈々と生き続けている、と個人的には信じている。

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